2027年度入学 東京大学情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻・受験体験記
Table of Contents
- 1 はじめに
- 2 TOEFL
- 2.1 全体
- 2.2 申し込み・会場選定
- 2.3 各 Section の対策・感想
- 2.3.1 参考書
- 2.3.2 Reading/Listening
- 2.3.3 Writing
- 2.3.4 Speaking
- 2.4 結果
- 3 研究計画書
- 4 共通数学
- 4.1 概観
- 4.2 各大問について
- 4.2.1 第 1 問(線型代数)
- 4.2.2 第 2 問(微分方程式・微積分)
- 4.2.3 第 3 問(確率統計)
- 4.3 本番の感想
- 5 専門科目
- 5.1 概観
- 5.2 各分野について
- 5.2.1 形式言語理論
- 5.2.2 OS
- 5.2.3 ハードウェア
- 5.2.4 機械学習
- 5.2.5 グラフ
- 5.2.6 アルゴリズム
- 5.2.7 ほか
- 5.3 本番の感想
- 6 面接
- 6.1 概観
- 6.2 本番の感想
- 7 結果
- 8 感想
はじめに
このブログは,2027 年度入学(2026 年度実施)東京大学情報理工学系研究科 (IST) コンピュータ科学専攻 (CS) の入試の体験記になります.
筆者は理学部情報科学科生なので,いわゆる内部生にあたります.基本的な情報などは研究科・専攻の HP をご確認ください.
受験する科目としては,
- TOEFL(事前提出),
- 共通数学,
- 専門科目,
- 面接
の 4 つがあります.また出願時に研究計画書を提出します.
TOEFL
全体
修士課程の入学には TOEFL の成績が必須です.確か直近 2 年のものを受けつけてくれますが,多くの人は B4 の 4 月以降に取っています.
直近で試験の形式やスコアなどが大きく変わりました.個人的には昔のものよりもはるかにやりやすく,すなわち「受験英語」らしくなったと感じます.
参考までに,筆者の英語力を客観的に証明するデータです:
- 共通テスト:R 100, L 92
- 東大二次:93(確か L 22)
- 英語一列:G1→G3
- TOEIC:R485+L455=940 (2023/9 (B1))
申し込み・会場選定
基本的には良い試験だと思うのですが,何と言っても高いです.具体的には正規の受験料は 195 USD で,申し込んだ 2/10 当時のレート (155.943 JPY/USD) でも 30,000 JPY を超えてきます.しかし,ネットに転がっている謎のインドの割引コードを使うとなぜか 割引されて 165.75 USD = 25,847 JPY になりました.それでもいくら Writing と Speaking があるとはいえ高すぎます.現在はもっと円安が進んでいるので,さらに酷いことになっているでしょう…
会場についてですが,まずそんなにどの会場でも年がら年中やっているという感じではないです(公式 HP 参照).東大生は御茶ノ水のテストセンター? などをよく使っているみたいですが,僕は地元のテストセンターを選択しました.口コミの評判もそんなに悪くなかったです.何より休日に TOEFL のためにえっちらおっちら往復 2 時間以上かけてテストセンターに行くのはやってられません.
午前と午後がありますが,昼夜逆転気味の理学部情報科学科生にとって,午後試験は大変ありがたいです.とはいえ申し込みが遅いと会場が埋まってしまうようなので,早めに申し込みましょう.
結果として同会場の受験者は 4 人しかおらず,とても快適でした.
各 Section の対策・感想
参考書
基本参考書などは全て中古で揃える性なのですが,先述の通り直近で試験の形式が大きく変わってしまったので,中古本はあまり使えません.泣く泣く生協で新品の 「TOEFL iBT®テスト 完全対策 中・上級編』 を購入しました.
Reading/Listening
はっきり言ってやるだけです.Reading は共テ(の後半の問題)と同レベル(むしろ選択肢や問題の作り方が素直なので共テより簡単かもしれない),Listening も共テ以上東大二次未満だと感じます.
Writing
突然ですが,皆さんは英検を受けたことがあるでしょうか? あの中にも Writing の問題がありますが,皆さんこんなテンプレを書いたことでしょう.
I agree with the opinion. I have two reasons. First, ... Second, ... Therefore, ...
なんと 1 問目については,今回もこれ です.問題集に何個かサンプルがあるはずなので,これを解いた型を身につけましょう.また,AI に投げれば全部添削してくれます.良い時代になりました.
2 問目については,意見を書く問題です.†有り余る実力† で書きましょう.
なお,Writing では当然キーボードを使います.案内では「米国式キーボードを使用します」と言っていますが,ANSI 配列を使用するとは言っていません.すなわち,JIS キーボードに US 配列を割り当てるという,本当にカスの所業をしてきます.普段 US 配列を使っている身としては Enter キーは遠いし Backspace キーに Space キーは小さいし最悪です.まあこのあたりのお気持ち表明はまた別の機会にするとして…
Speaking
Speaking には,Listen and Repeat と Take an Interview という 2 つのセクションがあります.前者は本当に何を対策したら良いのか分かりません.ネイティブでも,あるいは同じことを日本語でも,できるのか分からないです.あれは英語力試験ではなく短期記憶試験なので,諦めです.
Take an Interview はかなりまともです.僕は使っていませんが,AI で Speaking の練習ができるアプリがあるみたいなので,それを使って練習してみると良いかもしれません.一応問題の詳細は伏せますが,かなり話しやすい話題が出たのでラッキーでした.話題ガチャ要素も正直否めないです(なお 1 発 3 万円).
結果
5.0/6.0,満足の行く出来でした.周りの様子を見ていると,およそ上位 20% くらいの雰囲気です.ただ 5.0 の上は 5.5 で,それを取っている人はほぼいない印象です.
今まで 120 点満点で 1 点単位(?)で出ていたのが 6.0 点満点で 0.5 点単位,つまり 120 点換算で 10 点単位でしか出ず,かなりおおざっぱな成績しか出なくなっています.また,問題形式の変化からか,先人のブログなどの情報よりは全体的に旧スコア 10 点,新スコア 0.5 点くらいは上になっていそうです.「東大二次の英語の点数と TOEFL の点数は概ね一致する」という言説がありますが,これも TOEFL のほうが(120 点換算で)10 点高い,という感じになっているのかもしれません.

研究計画書
出願時に研究計画書を A4 2 ページで提出します(詳細なレギュレーションは改めて確認されたい).とはいえ研究などしたことがないので,演習 III の経験を膨らませて書きます.論文の引用数はある程度大事みたいなので,「その分野のことをちゃんと調べています」というアピールを行うためにも一通り論文は引用しましょう(1 個とかだと流石に面接で突っ込まれるようです).
ただ内部生が研究計画書で落とされることは余程のことが無い限りはないと思われるので,そこまで気負う必要はないです.しかしながら,この内容が面接で聞かれるので,面接までには自分が研究したいことを(もちろん学部生の解像度であっても十分だとは思うのですが)しっかり固めておくことが肝要に思います.
共通数学
概観
1 問 100 点,3 問で 300 点満点,150 分の試験です.「共通」というのは情報理工学系研究科全体で共通の問題です.主な分野は次の通りです:
- 第 1 問:線型代数
- 第 2 問:微分方程式・微積分
- 第 3 問:確率統計
なお,理学部情報科学科ではこれらの分野を基本的にろくにやっていません.†有り余る実力† でなんとかする必要があります.そのため ISer はだいたい 6 割取れれば OK,という空気感があります.計数er は満点勝負みたいな話を聞き,ひえ~ となっています.
各大問について
第 1 問(線型代数)
理学部情報科学科ではやっていませんと言いましたが,教養でやる数学程度のことではあります.むしろそれ以前の高校数学パートのほうが難しいかもしれません.最低限対角化はできるようになるべきです.なぜか対称行列しか出てこないので,「(実)対称行列は直交行列で対角化できる」という事実が重要になります.ほか,鏡映変換,ヴァンデルモンドの行列式,擬似逆行列などが出ていました.これらのトピックを知っていれば有利になりますが,知らなくても時間をかければ最低限は取れると思います.
第 2 問(微分方程式・微積分)
2 年ほど前までは微分方程式と微積分が交互に出ていたのですが,昨年それが崩されました.今年は複合問題で,来年度以降も「ヤマをはってどちらかのみを勉強する」というのは通用しなくなっていきそうです.
微分方程式パートでは,基本的な変数分離形,定数係数 階線型(だいたい ),1 階線型,1 階同次,ベルヌーイ,リッカチ型あたりを覚えておけば事足りると思います.解の一意性とかが重要なわけではないので,パズルゲーです.
微積分パートは,8 割高校数学の延長です.部分積分が頻出(それはそう).一応絶対収束,一様収束あたりは復習が必要です.
第 3 問(確率統計)
ここは 9 割高校数学です.よくできる高校生なら完答できる年もあります.一応幾何分布・指数分布など有名な分布の平均・分散と,マルコフの不等式・チェビシェフの不等式あたりは抑えておくと良いです.
本番の感想
Time Slice 20 分のラウンドロビンで解いていこうと決心.
第 1 問は前半がフィボナッチ数列の漸化式と対角化,後半はトリボナッチ数列風の漸化式と,対角化ができないので Jordan 標準形を求めさせさらに Jordan 標準形の一般論に踏み込んでいきました.前半の対角化があまりに汚すぎて時間を食ってしましました.結局合っていたのか今でも分かりません.
トリボナッチ風数列の漸化式を与える 3×3 行列が対角化不能であることを示したところで時間になったので次へ.
第 2 問は
についての問題でした(ちょっと細部が違うかもしれません).(1) は でほぼ Gauss 積分でおしまい,(2) 以降は部分積分で頑張ります.が,上手く行かなかったので一旦次へ.
第 3 問は, 回コインを投げる問題です.最初は表の出る回数についての問題,後半は連続して◯回以上表が出る,◯回表が出たら終了,などをテーマにした問題でした.東大数学で出してもギリ文句は出ないレベルです(マルコフの不等式を使う問題だけアレですが).頑張るだけですが,「12 回コインを投げて表が 5 連続以上出る確率」で嫌な気持ちになったところで第 1 問に戻ることに.
第 1 問に戻り落ち着いて Jordan 標準形を処理していきます.実のところちょうど行きの道中で Jordan 標準形を復習していたので,それに救われました.B1, B2 と Jordan 標準形をやってきましたが,B4 になってやっと理解できました.おかげでほとんど完答できたはずです.
第 2 問は,1 つは部分積分が上手く行きました.そのまま微分方程式を解く流れでしたが,ただの変数分離系なのでサクサク解きます.もう 1 つは部分積分をしていたら になってしまいました.どうして… 諦めて第 3 問へ.
頑張って嫌な問題を処理しましたが,どうも計算ミスをしていたようです.DP が一番楽そう.ちょっと反省.ただその後の評価の問題は解けたはずなので最低限の責務は果たしたかなと.
ほか色々な問題をつまみ食いしタイムアップ.所感としては第 1 問がほぼ完答,第 2 問は半分ほど,第 3 問は 3/4 ほどで全体 7 割ほど,という感じでしょうか.ISer としてはよくできたと思います.
なお,試験中無性にトイレに行きたくなりトイレに行かせてもらいました.行きたい人は行くべきです.
専門科目
概観
専門科目は 1 問 200 点の 4 問で 800 点満点です.先ほど共通数学は 300 点満点と申し上げました.つまり専門科目のほうが圧倒的に重要です.
基本的に出題分野は形式言語理論は必ず出て,OS,ハードウェアも高確率で出る,もう 1 問にアルゴリズムか離散数学か機械学習あたりが出る,という感じです.
正直外部生とどこで差がつくのか分からないのですが,差がついているんでしょう.まあ CPU 実験でコア係をやっていればハードウェア問なんて屁の河童です(フラグ).
各分野について
形式言語理論
問題構成は最近かなり固定されており,4 問構成で前半 2 問が題意の言語を理解しているかの確認,後半 2 問は正規言語・文脈自由言語 (CFL) の判定問題になっています.
前半 2 問は良いのですが,後半 2 問は天才以外お断りパズルコンテストみたいなもんです.僕は過去問を解いていて 3 割くらいしかまともに解けていません(私は天才ではありませんの札).
とりあえず 2A の講義のテキストがあるはずなので正規言語・CFL の Pumping Lemma を復習しましょう.
OS
細かい実装が出せるわけではないので出題分野は必然的に限られており,まあどうせページングかスケジューリングです(フラグ).あなたも OS になって正しく処理しよう!
ハードウェア
典型的な RISC-V の 5 段パイプラインプロセッサについてきちんと理解していれば怖いものはありません(フラグ).あと CMOS 回路,(N)AND/(N)OR/NOT 回路あたりを中心とした回路の構成方法については要チェックです(verilog しか触っていないと忘れがち (575)).ISer であれば 2A: ハードウェア構成法,3S: 計算機構成論 のスライドを復習しましょう(特にコア係・F/メ係は 3S のほうは余裕なので 2A のほうをちゃんとしましょう).
機械学習
ベクトルの微分を頑張りましょう.僕は内積を ,絶対値を と書くようになってからやりやすくなりました.スカラーの部分は可換, あたりに注意して計算しましょう.
僕が丸暗記していた様子です:
グラフ
教員が天才なので,天才になりましょう.私には無理です.
アルゴリズム
とりあえず 2A の「アルゴリズムとデータ構造」でやるレベルのアルゴリズム(AtCoder で茶~緑?)はちゃんと理解しておくべきです.競プロer はライブラリに投げておしまい,という人も多いですがちゃんと中身を理解しないと院試では詰みます.暖色コーダーならつよつよデータ構造で殴れるらしいですが,私は 4 年前の水色コーダーなので無理です.
ほか
知らんので,出たらがんばる
本番の感想
第 1 問はやはり形式言語理論.「 に属する語から, の倍数文字目だけをもってきてできる言語」についての問題でした.(2) までは普通にやって,(3) 以降は頑張るパートです.(3) は一応証明できたような気がしますがウソを書いている気もします.(4) については 2 択を外したみたいです.
第 2 問は OS.なんと,ストレージに関する問題が出ました.聞いていません… と言ってもまあ OS で他どこが出ますか? と聞かれたらここしかないので,軽く復習をしてはありました.ただいかんせん計算が大変です.ちなみに後半パートの問題は去年 OS の試験が終わった直後僕が IS24er に解説していました.そのときの記憶が強く残っており,進研ゼミ状態でした.なお最後の問題は HDD と SSD の違いについての問題でしたが,ほぼお気持ち表明をしていました.
第 3 問はハードウェア,なのですが,明らかに「やるだけ」の問題ではありませんでした.地力がない人は白紙になりそうだなと感じます.(2) はプログラムを上手く作ってセットアソシアティブキャッシュのウェイ数を推定する,という良問でした.反対に (3) は悪問です.4-way セットアソシアティブキャッシュを用いた 32*32 行列積の計算におけるキャッシュミス数を求める問題で,人間が試験時間中にできるわけがありません.
第 4 問はアルゴリズム,Priority Queue の問題でした.やるだけです.ただ第 3 問に時間を食われ,(4) をちゃんと解けませんでした.今思えばこちらを優先すべきでした.
感覚だけの自己採点では 120-160-130-150=560 くらいでしょうか.もうちょっと取りたくはありますが,ベストは尽くせたと思います.
なお,専門科目の試験中もトイレに行っています.ちゃんと試験開始前に行ってるんですが… 断じてトイレでカンニングをしたりはしていません.
面接
概観
筆記試験の数日後,Zoom にて行います.恐らく面接までには筆記の点数が確定しているものと思われます.志望理由書を読み返し,改めて「志望理由」について 1 分で話せるようになりましょう.AI との壁打ちも有効です.「これって既存の研究がありますよね?」と聞かれたときの返しがないと死にます.
基本的には 1 回で終わるのですが,2 回目に呼ばれることもあるようです.この場合は,たいてい第一志望には行けない可能性があるわけなのですが,真偽は不明です.
本番の感想
3 つに分けられ Zoom に入れられるのですが,12:00 に集められ一生待機室に放りこまれたかと思えば 2 時間放置されます.いきなり画面が遷移し,面接がスタート.僕が聞かれた内容は,
- 氏名・受験番号・第一志望研究室の確認
- 志望理由について 1 分程度で
- (志望理由書で色々なことを書きすぎていたので)特にやりたいことは何?
- 実際の世界に落とし込むにあたり,ハードウェアのどの観点が重要になりそう?(詳細後述)
の 4 問でした.時間は 4 分程度でした.
とくに 2 つ目については,「情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻 (IST/CS) を志望した理由」→「ハードウェアをやりたい理由」→「研究室を志望した理由」と段階的に掘り下げていきましたが,どちらかと言えば「研究室を志望した理由」のところを掘り下げたほうが良かったかもしれません.
「特にやりたいこと」については,「省電力な AI 向けドメイン特化アーキテクチャをつくりたい.具体的には,パラメータを計算で復元し,メモリアクセスのコストを抑えることで省電力化をはかりたい.」という内容のことを答えました.ただ,これだと「既存の研究とどのように差別化するの?」と聞かれるのが目に見えていたので(実際過去の面接の質問でそのようなものがちょくちょく(とくにこの先生は)あった),さらに「このような取り組み自体はあるが,既存のハードウェアアーキテクチャの中での研究が現状多く,ハードウェアとアルゴリズムを協調させるところの研究においては新規性が生み出せると考えている」ということを答えました.
4 つ目については正直あまり覚えていないです.小型の機器から大型データセンタまであるけどどこが良い? みたいなことが前段で聞かれた気がして,それには「現状各デバイスから大型データセンタにクエリを投げるみたいなことをしているから大型データセンタじゃないか」みたいなことを答えました.しかしとくにその場合にどこがボトルネックになりそうか,どこが研究しがいがありそうかみたいな話はあまりできず,解像度の低さを思い知らされました.担当教員もさらに何か聞きたげではありましたがこのまま終わりました.
かなり人気が高い研究室のよう(それも第 1 から 第 3 まで)だったので,2 回目の面接を覚悟していましたが結局面接は 1 回だけで終了しました.これが第 2 希望の研究室で十分滑り止まっているからなのか,無事に第 1 志望の研究室に通っているからなのかは現状(面接終了直後)不明です.
なお,基本 3 時間程度の拘束時間のうち面接をしているのは数分です.その間(原則として)トイレにも行けないしで,ひたすら Discord が盛り上がっていました.
結果
TBW
感想
TBW